五島の部屋>後継者問題に悩む経営者の方必見!

外部へのM&Aを含む 事業承継の多角的な考察

前回は、各種承継方法についてお話しました。これをまとめると左記の図のようになります。3つの承継方法があるという広い視野を持って頂きたいと思います。 この内、最も多いのは親族内承継ですので、今号は、「親族内承継」の具体的な進め方を考えていきます。

承継者選定と育成教育

一般的には「誰に承継させるのか」を決めるのが出発点といえますが、いずれも大切にしている子供たちの中から誰か一人を選ぶこと自体が難しい問題です。 この問題については、肉親の感情は脇に置いて、自社の現状分析及び将来展望を踏まえ、どのような能力や個性を持った承継者が望ましいかを経営者として判断し、該当する人物を選択することが重要です。承継者となるということは良いことばかりではありません。適任でない者に承継させれば社業が振るわなくなり、従業員や取引先が困るだけではなく、経営者としての資質を問われる承継者自身が一番苦しむことになります。そこで、現状分析と中長期の将来展望を検討して(少なくとも中期経営計画は立てて下さい。)そこに必要となるリーダーシップを持った親族を承継者に据えて下さい。 次に承継者が決まれば、経営者に相応しい人物となるように育成し、教育することになります。その際に気を付けたいのは、「育成教育の目的が一般的な経営論の体得ではなく、自社の経営であるという視点を忘れさせないこと」という点です。MBAを取得したり、著名な経営者の書籍を読んだりする中で、承継者は、その若さゆえに「あるべき理想の経営」を目指す場合があります。しかし、経営資源に限界がある中小・中堅企業において、例えばコーポレートガバナンスや内部統制を声高に叫ぶことは無用の混乱を引き起こすことになります。常に自社の現状を踏まえた地に足の着いた考え方をするように指導するのは、現経営者の役割です。

承継者への 議決権付き株式の集中

さて、親族内承継で一番問題になるのは、承継者への株式の集中といわれていますが、これは正確ではありません。単なる株式の集中ではなく「議決権付き株式の集中」が正しい理解となります。普通株式のみを発行している法人でも、定款変更をして各種の種類株式を発行することが可能です。議決権さえ承継者に集中させれば、議決権のない株式を他の相続人が取得しても大きな問題ではありません。そこで、普通株式の他に議決権のない配当優先株式等を発行し、普通株式は承継者に、議決権のない配当優先株式等を他の相続人に相続させるという遺言を残す等の対策が考えられます。なお、株式の評価としては、議決権のある株式と無議決権株式とで、1株当たりの評価額は同一というのが原則です。

事業用資産と無形資産の 承継にも手を打つ

また、議決権のある自社株式を承継者に集中させることにより、承継者は、会社の経営権を確保することができます。ただ、承継者が会社の経営を安定的に承継するには、承継者が事業用資産(本社や工場等)を活用できるよう手を打っておくことも必要です。この点、遺言によって承継者に集中させることも一案ですが、自社株式に加えて事業用資産まで承継者に集中させることは、他の相続人の遺留分を侵害する危険性があります。そもそも、事業用資産については、承継者に所有権を承継させることは必須ではなく、使用権を確保して事業用に活用できればいいのです。例えば、現経営者の個人所有の土地上に会社所有の工場建物が存在する場合、安価な賃料で長期間の賃貸借契約を締結しておけば、他の相続人がその土地を相続したとしても、安価な賃料さえ支払えば、承継者が会社経営のために継続的に活用することができるのです。このように事業用資産については、安定的な活用ができる権利を会社に確保させておけば、会社の経営権を引き継いだ承継者が当該事業用資産を活用できるようになり、承継前と変わらぬ環境で経営できるのです。 その他、引き継ぐべきは自社株式や営業用財産といったモノだけではありません。会社を支える従業員の引き継ぎは極めて重要です(古参の従業員が承継者と対立関係にならないように、双方を調整するのは現経営者の役割です。)。金融機関との関係・取引先との関係等、各種ステークホルダーとの円滑な状態は、長年の努力により築いてきた会社の大切な無形資産ですので、これを承継者に引き継がせることも重要です。次号以降では、親族内に承継者がいない場合の社内承継や外部承継について検討したいと思います。

-----五島 洋(ごしま ひろし)-------飛翔法律事務所 パートナー弁護士 1971年大阪市生まれ。1995年、同志社大学大学院在学中に司法試験に合格。1998年に弁護士登録し、現在は弁護士9名・事務職員6名の弁護士法人飛翔法律事務所を経営する。企業法務が中心であり、M&A・事業承継・人事労務・ベンチャー支援等を専門としている。 主な事務所内共著に「実践契約書チェックマニュアル」「ビジネス契約書式100例」「人事労務管理の108ポイント」「キャンパスハラスメント対策ハンドブック」「M&Aコンパクトバイブル」(いずれも財団法人経済産業調査会)がある。 一般社団法人関西IPOチャンスセンター代表理事及びNPO法人同志社大学産官学連携支援ネットワーク副理事長も務める。

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