湊 通夫氏>大阪人は“賑やか”好き。 集客の箱として 街を盛り上げたい。

オリックス・バファローズと
球団本拠地・京セラドーム大阪を共に牽引する湊通夫氏。
“大阪随一の集客の箱”のトップはこの街の経済をどう見ているのか。
球団の集客戦略と併せて大阪活性化の秘訣を聞いた。

総合リース企業のオリックスで法人営業を担当していた湊通夫氏が、オリックス・バファローズの事業本部長に就任したのは2011年12月。〝ファンを増やせ〟というミッションを与えられ、「何から手をつけていいか分からなかった」と当時を振り返る。 「私がやってきた法人営業=BtoBビジネスは対面する一人に信頼していただき、提案内容を納得していただければ、商談は基本的には成立します。対してファンと向き合うBtoCビジネスはそれでは通用しません。同じことを考え行動する人はいないわけですから、常に360度全方位にアンテナを張り、ファンの皆様に楽しんでいただける仕掛けを考えなければならないからです」 BtoCの難しさに直面した湊氏はCRM(顧客管理システム)を導入し、綿密なマーケティング戦略によってファンの嗜好に合ったサービスを次々展開。結果、球団の観客動員数とファンクラブ会員数を共に大幅にアップさせた。 「新サービスを打ち出して成果が出る。それはファンの皆様に受け入れられた証拠ですよね。BtoCは確かに難しいですが、私にとってはそれ以上に、ファンの皆様と一体感を味わえる楽しいビジネスなんです」

「四輪駆動ビジネス」で ファンを楽しませる 仕掛けづくり

我々は四輪駆動車。坂道や難路に強いのが持ち味ですね」
比喩を交えてそう語る湊通夫氏は、オリックス・バファローズの経営会社オリックス野球クラブの専務取締役事業本部長と、球団本拠地・京セラドーム大阪の運営会社大阪シティドームの代表取締役社長を兼務する。京セラドーム大阪もオリックスグループの所有。つまり湊氏は球団と球場の一体経営の舵を取っていることになる。
「球団経営の強みは〝チーム×ビジネス〟。チームの成績とファンサービスの両輪で強みを発揮する仕組みです。それが前輪とすれば、後輪はドーム経営。オリックスグループとして前後輪の四駆(=一体経営)でお客様にサービスを提供できるため、安定感のある経営ができるのです」
後輪を担う京セラドーム大阪の収益の柱は看板などのイベント外収入と、コンサートや野球などのイベント収入の2つ。近年はコンサートが堅調で、最大収容人数5万5000人のドームの年間稼働率は8割を超える(2016年度実績、コンサート準備期間も含む)。
一方の前輪の球団経営も堅調だ。「常に新しい仕掛けを用意し、ファンを楽しませる」ことをBtoCの経営方針に掲げ、過去14年度の観客動員数は前年比18・4%増となる170万人を突破。その後も減少することなく堅調に推移している。
「野球の試合をおそば屋さんに例えると〝ざるそば〟だと思っています。試合がそばで、その主食を盛り上げるイベントや球場運営がつゆ・薬味に相当します。たとえば球団のダンス&ヴォーカルユニット『BsGirls』は応援団の域を超えて、音楽ユニットとして楽しめるレベルを目指しています。このBsGirlsはつゆで、そのつゆが美味しいからそば(試合)が引き立つ。お互いの相乗効果でファンの皆様に楽しんでもらえればと思います」
ほかにも選手とファンがチェック柄のユニフォームを着る『オリ達デー』・『オリ姫デー』、ドーム内のオフィシャルチームストアのリニューアル、女性専用トイレや赤ちゃん休憩所の新設など、まさにドーム経営と一体化したサービスでファンの満足度を高めてきたのだ。

「年会費18万円」が即売するファンクラブ運営の秘訣

2012年にはマーケティング戦略の要としてCRM(顧客管理システム)を導入し、ファンクラブも刷新。13年シーズンからポイントプログラムを始め、年会費のグレードを設定した。
17年シーズンは6つのグレードを設け、最上位となるエクストラプレミアメンバーSコースの年会費は18万円。強気の値段設定に思えるが、「高いグレードから先に売れていく」と言うように、200名限定で売り出したSコースは1ヶ月あまりで完売したという。ファンクラブ運営の秘訣はどこにあるのか。
まず前提は、前述したようにBtoCの難しさだ。一人ひとり嗜好が異なる会員の行動データを正確に把握する必要があり、CRMを導入した経緯がある。さらに球団特有の課題もあった。オリックス・バファローズは阪急ブレーブスの流れを汲むオリックス・ブルーウェーブと、近鉄バファローズが合併して誕生したという背景である。
「異なる本拠地の球団がひとつになり、別々のチームを応援していたファンが一緒になってしまったわけです。両方のファンのニーズに応えるのも大事ですが、それを意識しすぎると方向性が定まらない。そこで球団としての新しい方向性を示し、ぶれない軸でサービスを提供し続けるためにファンクラブ改革を行ったわけです」
CRM導入後、チケットやグッズの購入、球場への来場といったファンの行動を詳細に分析し、嗜好に合った新サービスを次々打ち出している。たとえば女性会員は選手個人を応援する傾向があると分かり、女性限定のクリスマスパーティーや撮影会などを実施。女性ファン(=オリ姫)を増やす契機となった。
「これは一例ですが、ファンクラブ全体の仕組みでいえば、どのグレードも金額換算すると非会員よりお得です。さらにグレードが上位になるほどサービスの付加価値とプレミア感が高くなり、ポイント付与率もアップする。だから何回以上観戦するなら会員になったほうがお得、グレードを上げたほうがお得……といった動機づけになり、熱心なファンの方ほど最上位グレードに近づいていくわけです」
このようにファンが求めるサービスとお得感をグレードに応じて提供し、会員数の底上げとコアファンの育成を同時に達成する仕組みになっているのだ。ファンクラブ改革の結果、会員数は14年9月時点の4万人から1万人以上増加し、17年1月現在は5万2000人。今シーズンも地道な積み重ねで1万人の増加を目指している。

東京オリンピックの次は大阪。大阪を盛り上げる「起爆剤」とは

京セラドーム大阪は『スポーツと文化の発信基地』として誕生しました。今後もたくさんの人を大阪に集め、野球やコンサートなどを通じて街を盛り上げていきますよ」
大阪への思いを口にする湊氏は20
16年、オリックス・バファローズの練習拠点とファーム本拠地を神戸から舞洲地区に移転させた。
「これは大阪市が募集した舞洲地区の事業用地を大阪シティドームが落札したことで実現しました。ファンの皆様が気軽に足を運んでいただける環境を整備し、スポーツ・レクリエーションアイランドとしての舞洲地区の活性化に努めていきます」
そんな大阪の誇る〝集客の箱〟の社長は、この街の経済の行方をどう見ているのだろう。
「ポイントは〝起爆剤〟だと思っています。いま府・市を挙げて国際博覧会と総合型リゾートの誘致を進めていますよね。大阪の人は賑やかなことが大好きですから、こうした大イベントやリゾート施設を誘致できれば街が活性化し、経済がさらに良くなっていくはずですよ」
最後に気になる球団の今シーズンの意気込みについて。
「17年シーズンのキャッチフレーズは『野球まみれ 一勝懸命2017』です。目の前の一勝を泥臭く勝ち取る先に勝利の頂がある。いまチームは強固にまとまっています。昨年以上の結果を期待していただいて間違いない、そう断言できます」
オリックスの大活躍も〝起爆剤〟となり、大阪を盛り上げてくれることに期待したい。

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