西田 淳一氏>大阪経済を支える、 可能性を秘めた中小企業を応援する。

今年4月、大阪府商工労働部長に就任した西田 淳一氏。 商社勤務時代の経験を生かし、現場主義に徹してニーズや思いを拾い上げ、 大阪の産業経済の底上げを図るべく奔走する。 大阪経済を活気づける処方箋、そして思いを聞いた。

“副首都”にふさわしい 存在感を発揮するために

大阪府は880万人の人口を持ち、東西二極の一極を担う力を持った全国第二位の自治体組織。大阪の産業経済を活気づけることが日本の産業経済の底上げにそのままつながるという自覚と責任を持ってやるべきことをやり、見直すべきところは見直していきましょう」。西田氏は今年4月の着任の際、商工労働部の職員を前に真っ先にこう伝えた。 大手総合商社の三井物産に勤務した30数年間は産業機械の分野を長く担当し、経営企画、リース事業、リテール事業の経験に加え、英国、インドでの駐在経験もあり、アジアを中心に世界各国をまたにかけ仕事をした。平成24年に大阪市の区長公募に手を挙げて西淀川区長に転身し、昨年1年間は大阪府・大阪市副首都推進局副首都企画推進担当部長として「副首都ビジョン」策定に携わった。 「大阪が世界で存在感を発揮する東西二極の一極として、日本の未来を支え、けん引する成長エンジンとなる副首都として発展を遂げるためには、グローバルな競争力を向上させることが必要です。その肝となるのが産業経済の振興と発展であり、それならば、これまでの経験を生かし、現場に下りて施策の実践に当たることでさらにお役に立ちたいと考えた」と、今回商工労働部長の公募に応募した思いを語る。 松井一郎知事をはじめ周囲から期待されている役割が、民間企業での経験を生かした仕事の手法、事業の進め方を注入し、目標達成のために一体感を持って動く組織へと変えていくことだ。その一つとして平成29年度の部局運営方針には、活動指標(アウトプット)とともに、より踏み込んだ成果指標(アウトカム)をできるだけ数値として盛り込んだ。「施策にどう取り組んだかではなく、それが実際に産業経済の底上げにどれだけつながったのかを問うようにしています。目標に達することができなければ批判も受けるため勇気がいることですが、それならばなぜできなかったのかを分析して次につなげていけばいいと伝えています」。そこには、「われわれの行動のすべては大阪経済の底上げ、発展につながるためにやっているのだ」という強い覚悟がある。 そのための行動スタイルとして職員には「現場主義の徹底」を促す。「公務員の仕事は法律、条例に縛られ前例踏襲になりがちで、どうしても感性が鈍ってしまう。そうならないようにするためには現場に足を運び、的確なニーズを拾い、施策に反映していくことが大切」と話す。自身、商工労働部長に就任して以降、省庁や経済団体、各国総領事館、ベンチャー企業のミーティングなどに精力的に出かけ、情報収集、意見交換を積極的に行っている。

アジアを中心とした 海外市場の開拓に力点

平成29年度の施策では①大阪・関西の強みを活かした成長促進『大阪産業の成長エンジンづくり』 ②中小企業が頑張れる環境づくり『経営・技術・資金面にわたるトータルサポート』 ③多様な人材が活躍できる環境づくり『女性・若者・障がい者などの活躍支援』 ④国際ビジネスの促進『アジアを中心とした海外市場の開拓』の4つの柱を掲げている。 昨年度も掲げた①~③に加え、西田色を打ち出し、今年度から新たに加えたのが④の「国際ビジネスの促進」だ。そこには「取引のあった大手企業の海外、東京シフトなどにより、オンリーワンの強みを持つ大阪の中小企業がともすれば内向きになってしまっています。外に視野を広げればもっと大きく羽ばたけるチャンスがあるはず」との思いがある。今年度はJETROなど関係団体との連携を強め相談機能を強化するとともに、上海事務所や9地域(インド、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、欧州、北米)で現地における販路開拓などを支援する大阪ビジネスサポートデスクを活用した支援体制などについて広く周知を図っていく。また、アジア各国の工業団地への進出を後押しするほか、アジア諸国から大阪への企業誘致にも力を入れていく考えだ。

中小企業の 固定概念を覆す

中小企業といえば下請企業という固定観念で語られたり、依然として厳しい環境にある中小企業の…というのがあいさつをする時の決まり文句になっていたりしますが、そうではないと言いたい」と西田氏は中小企業の支援に当たって、まず中小企業に対する紋切り型のあるいは表層的なとらえ方を変えるべきと訴える。西田氏ならではの中小企業の定義は「潜在的な成長の力を持ったベンチャー企業」だ。そうした視点に立つことによって新しい風が起こり、新しいことに挑戦する企業を応援すべく支援策の中身も変わってくるという。 金融機関と連携した中小企業支援策もその一つ。成長分野で事業を営んでいたり、海外進出を検討している企業に対し、金融機関が独自の強みを活かした「金融機関提案型融資」で府のバックアップによる低利融資を行うほか、事業の成長・発展に必要な設備投資資金を供給する「設備投資応援融資」の利用を進めるとともに、企業の現場により近い市町村との連携を深め、一定の融資枠について市町村の創意工夫を活かした形を検討しているという。 また、7月31日には、特許庁所管の(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)の「INPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)がグランフロント大阪に開設された。同本部では、海外展開や営業秘密管理・知財戦略など、高度・専門的な知財活用支援が実施されるとともに、特許庁の審査官による出張面接審査、テレビ面接審査等が行われ、特許出願における利便性の向上が図られる。西田氏は、「知的財産権は国内のみならず海外で中小企業が競争に勝ち残っていくために大きなカギを握る。そのためのバックアップも惜しまない。中小企業の利用を広く呼びかけていく」と話す。 ものづくり分野を中心とする産業人材育成の拠点化を進める府立高等職業技術専門校についても産業界のニーズを踏まえた訓練内容の充実を図る。現在検討しているのがものづくりの現場で多く求められている3次元CADのオペレータだ。CADデータを使ってものを仕上げる工作機械メーカーの担当者とも情報交換を行い、即戦力を育てるための的確なカリキュラム作成を職業訓練担当者へ指示するなど、ここでも西田氏は現場の声を施策に反映しようとしている。

大阪経済の 底上げを目指す

地域産業の裾野を広げるため地方自治体には次世代の成長産業を見定め、地域資源を生かしながらその立ち上げ期を先導していく役割も求められる。その一環として今年4月に開設したのが産業化戦略センターだ。同センターは、各部局の取組みのうち、産業として成長が見込めそうなものについて民間企業や金融機関、ファンドなどと連携しながら迅速な産業化を図り、同時に社会・行政課題の解決も目指す。また、商工労働部では 「IoTやAI、ロボット、ドローンなども活用しながら第4次産業革命の取組みを視野に入れ、例えば中小企業の人手不足を解決するようなロボットの開発など新たな産業を育てていきたい」と意欲を示す。 2025年の大阪万博誘致、IR(統合型リゾート施設)立地など大阪の活力を取り戻す起爆剤になりうるプロジェクトが実現すれば、産業面への大きな波及効果も期待される。「どちらも実現すればの話ではありますが、なかでも大阪万博は医療、健康、生活、環境分野の産業の未来形、発展形を示す場でもあり、まさに商工労働部が大きくかかわっていくところ。万博開催以降の10年、20年先を見据えた大阪の産業経済の未来像を企業と協力しながら提案していきたい」と先を見据えている。 就任1年目の今年は走りながらつぶさに現場を回り、生の声に耳を傾け、情報収集した上で来年からの施策展開や今後の展望に活かしていく考えだ。「国は2020年までに現在532兆円の名目GDPを600兆円に伸ばす目標を立てています。大阪府では、どの分野でどれだけ伸ばしていけるのか検討していきたい」と西田氏。 高校までを大阪で過ごし、大学からは東京での生活が長く続いた。東京と大阪を比べてあらためて思うのは生活する都市としての大阪の魅力だという。「東京のように集中しすぎず、京都、神戸、奈良も近い。職と生活を両立させる上でこれほど快適な都市はないと思っています。だからこそ中小企業の皆さんには自信を持って大阪に根を下ろし、時代のニーズをとらえながら大阪でイノベーションを起こしてほしい。そのための支援はしっかり行っていきます」と力強く語る。

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