菅 哲哉 氏>「関西」と 「リテール」に とことん こだわる銀行

株式会社関西みらい フィナンシャルグループ 代表取締役兼社長執行役員 菅 哲哉 氏
関西みらいフィナンシャルグループは、 関西アーバン銀行、近畿大阪銀行、みなと銀行の 3行が統合して設立された、 関西最大規模の地銀グループ。 この統合は単なる生き残りを狙ったものではなく、 関西のリテール(中堅・中小企業)への サービスを徹底するためのものでもある。 代表取締役兼社長執行役員の 菅哲哉氏にその思いと戦略を聞いた。

関西最大の地銀グループ

2017年11月、りそなホールディングス傘下の中間持株会社として関西みらいフィナンシャルグループ(以下、関西みらいFG)が誕生。同年12月に近畿大阪銀行を子会社化、2018年4月には、東証一部に上場すると同時に関西アーバン銀行、みなと銀行を子会社化し、本格的に事業を開始している。 「関西みらいFGはその名の通り、関西の未来にコミットした会社です。そして、リテール、つまり個人や中堅・中小企業のお客様に徹底して向き合うと宣言している銀行です。私はいつも社内外に向けて、『関西みらいFGはお客様からなくてはならないと思っていただける銀行グループになる』と言っています。お客様と共に将来に向けて歩んでいくという思いを持って、新しいビジネスモデルにチャレンジし始めたところです」と、社長の菅哲哉氏は語る。もともと3行の主要地盤であった大阪、兵庫、滋賀を中心に、同グループは関西で最大規模の地銀グループとなった。 菅氏は関西の中小企業を取り巻く環境について、次のように話す。 「全般的に先行き不透明感はありますが、短期で見ると良い環境が整っていると思っています。特に大阪の経済環境は、現時点で輸出や生産の状況が良いうえに、インバウンドや万博誘致などの期待感もある。昔から大阪は商売の町と言われてきたように、今後はさらに、関西から新しいビジネスがつくられていくような動きが大事になってくると思います」株式会社関西みらい フィナンシャルグループ 代表取締役兼社長執行役員 菅 哲哉 氏

「関西」の「未来」に 徹底して貢献

2018年4月1日 関西みらいFG本格始動。 (左から)りそなHD 東和浩社長、みなと銀行 服部博明頭取、関西みらいFG 菅哲哉社長、 関西アーバン銀行 橋本和正頭取、近畿大阪銀行 中前公志社長んな中、関西みらいFGが顧客に果たす役割は何なのか。菅氏はまず「圧倒的な利便性の向上」を挙げる。3行の統合により、同グループの関西地区での有人店舗数は375店舗と、関西最大の店舗ネットワークを有する銀行グループになった。 「たとえば、りそな銀行のキャッシュカードを持つお客様が、みなと銀行のATMでお金を引き出す回数は今までの2倍。近畿大阪銀行のお客様が、みなと銀行や関西アーバン銀行でお金を引き出す回数は1.5倍になっています。これは利便性が高まったひとつの証でしょう」 もうひとつの役割は「情報ネットワークの構築」だ。先頃、同社は海外に進出している法人顧客を対象に、上海とバンコクでビジネス交流会を開催した。関西一円の業種が異なる企業が集まり、新たなビジネス展開のきっかけにしてもらうことを目的とした情報交換会である。
ある。昔から大阪は商売の町と言われてきたように、今後はさらに、関西から新しいビジネスがつくられていくような動きが大事になってくると思います」 んな中、関西みらいFGが顧客に果たす役割は何なのか。菅氏はまず「圧倒的な利便性の向上」を挙げる。3行の統合により、同グループの関西地区での有人店舗数は375店舗と、関西最大の店舗ネットワークを有する銀行グループになった。 「たとえば、りそな銀行のキャッシュカードを持つお客様が、みなと銀行のATMでお金を引き出す回数は今までの2倍。近畿大阪銀行のお客様が、みなと銀行や関西アーバン銀行でお金を引き出す回数は1.5倍になっています。これは利便性が高まったひとつの証でしょう」 もうひとつの役割は「情報ネットワークの構築」だ。先頃、同社は海外に進出している法人顧客を対象に、上海とバンコクでビジネス交流会を開催した。関西一円の業種が異なる企業が集まり、新たなビジネス展開のきっかけにしてもらうことを目的とした情報交換会である。 「企業経営をされている方々は、私たちが想像している以上に多角化や新分野進出に関心をお持ちです。それならば私たちがお客様を後押しする立場になろう、新しいビジネスの立ち上げを応援できる銀行であろうと、そんな思いで開催しました」 傘下の3行が集まれば情報量は3倍に。さらに、りそなホールディングス傘下のりそな銀行、埼玉りそな銀行のネットワークも活用すれば、その量は5倍以上になる。統合によって得られる規模のメリットを最大限に活かす。それが菅氏の方針だ。 そして、さらに掲げる役割のひとつが「地域への貢献」である。この6月、関西アーバン銀行が「びわこ・みらい活性化ファンド(通称:FUNAZUSHIファンド)」を設立した。地域のブランド確立、インバウンドの活性化、食のブランド向上など、いずれも地域に貢献する事業を対象にしたファンドだ。 「目的は地域の産業創出や地域ブランドの確立です。地域貢献を行なう滋賀県のお客様に出資することで、私たちも間接的に地域貢献していきます」 また、みなと銀行も「みなと地域貢献寄贈型私募債『あゆみ』」という商品を通じて、地域の教育機関や公共機関、スポーツチーム、地域発展プロジェクトを支援する仕組みをつくった。このように、関西みらいFGは「関西」の「未来」に徹底して貢献する企業であることが、菅氏の言葉からうかがえる。

中小企業のニーズに ワンストップで対応

方、同グループがりそなホールディングスの傘下にいることで、顧客が得られるものは何だろう。そのメリットについて、菅氏は大きく2点を示す。 まずは「事務システム統合による一本化したサービス」だ。2019年10月に向けて、関西アーバン銀行のシステム統合を進めている。その1年後にはみなと銀行もシステム統合が完了し、同グループのシステムとりそなグループのシステムが一本化する。 「要するに、どこの店に行っても同じサービスが受けられるということです。たとえば通帳に記帳する時、りそな銀行の通帳を持って関西アーバン銀行、みなと銀行、近畿大阪銀行のどこでも記帳できる。届出などのさまざまな手続きもそうです。これは圧倒的な利便性の向上になります」 そして、もうひとつは「りそなホールディングスのリソースをフルに活用できること」。なかでも菅氏は、信託機能と不動産機能を挙げる。 「りそなグループは信託を併営しています。今、中小企業の経営者がいちばん悩んでいるのは事業承継の問題。この問題は多かれ少なかれ、どこの企業にとっても問題でしょう。そして一口に事業承継と言ってもさまざまなケースが考えられる。私たちはそこにりそなの信託機能を使ってお客様にサービス提供していきます」 中小企業のオーナーは企業の経営者でもあり、個人でもある。たとえば工場の底地が個人の所有であるケースは多い。株や不動産などの資産をどのように引き継ぐか、相続に絡む問題もある。中小企業の事業承継に信託機能と不動産機能は欠かせない。 「関西みらいFGは、りそなと連携することで、信託機能と不動産機能を使うことができる。中小企業のお客様のさまざまなニーズにワンストップで対応できる。このメリットは大きいですね」

経営資源をお客様だけに 集中できる銀行

今の地方銀行を取り巻く環境は厳しさを増している。少子高齢化による人口減少、超低金利の長期化、そしてフィンテック(FinTech)の台頭など。菅氏は「それらが地方銀行にとって厳しい環境であることは間違いない」としながら、その中で同グループがやるべきことを3つ示す。 ひとつは「face to face(の姿勢)」。いわばリテールバンキンググループの本業といえるものであり、先に述べた関西みらいFGが地域の顧客に果たす役割のことだ。 2つめは「フィンテックやAIとどう向き合うか」。フィンテックの台頭は、これまで従来の金融機関が担ってきたサービスの一部機能をIT事業者等が低コストで請け負うため、金融機関にとっては脅威ともなる。 「これは地方銀行が避けて通れない大きな環境の変化です。しかし、言い方を変えるとチャンスでもある。フィンテックやAIは、活用次第で私たちが今まで出会えていなかったお客様と会える機会をつくるからです」。一般的に銀行は、100人の顧客がいたら、対面しているのはそのうちの10人だと言われている。たとえば住宅ローンを借りた人と、それ以降は顔を合わせることがない。そういう顧客が9割を占める。「フィンテックやAIはそういうお客様を掘り起し、対面しなくてもサービス提供する機会をつくる」、というのが菅氏の見方だ。 3つめは「生産性を高めること」。 「世間では人を減らす話ばかりが飛び交っていますが、これからは人を採りたくても採れない時代がやってくる。人口減少の中で、どのように業務を効率化して生産性を高めていくのかが課題です」。菅氏はこの点に、りそなグループのデジタル化を活用するという。

見据えるのは海外や 大企業ではなく 個人や中堅・中小企業

して、もっとも重要なポイントとして、菅氏は次のように話す。 「これらは日本中の地方銀行に共通する課題ですが、私たち関西みらいFGの優位性は、2つめと3つめはやらなくていいという点です」。どういうことか。菅氏によると、「フィンテックへの対応、オペレーション改革や業務の効率化による生産性の向上は、りそなホールディングスが全く同じことをやっている。その方法を共有する」と言うのだ。 「事務システム統合が完了すれば、私たちはりそなグループ全体で全く同じものが使える。だからその点に投資する必要がない。そのぶん私たちは、地方銀行としてもっとも重要な『face to face(の姿勢)』のところに経営資源を集中できる。それが他の地方銀行と決定的に違う点です」。日本で資産規模4番目の銀行グループであるりそなのリソースを活用できるメリットは、関西みらいFGの事業の根幹を支えている。 「しかも、りそなは海外や大企業ではなく、個人や中堅・中小企業のお客様を見ており、リテールナンバーワンを目指すと言っている。私たちと全く同じ道を進もうとしているのです」

関西人はイノベーティブで あってほしい

株式会社関西みらい フィナンシャルグループ 代表取締役兼社長執行役員 菅 哲哉 氏氏が同グループの社長に就任して*5ヶ月。仕事の信条は何だろう。 「これは以前からずっと言い続けてきたことですが、『当たり前のことを、ばかにせず、ちゃんとやる』。そして『明るく、前向きに』ですね。仕事は起きている時間の大半を使う。人生そのものだと思います。だからこそ楽しくやりたいし、人との出会いを大事にしたい」 7~8年前に始めたという趣味の山登りの話になると、「いやいや、私の場合は『山登り』じゃなくて『山に行く』んです。ロープウェイを使いますから」と笑う。「初めて行ったのが立山で、それはもう景色がよかった。これが日本かというくらいきれいでした」。夏はたいてい信州方面に出かけ、昨年は青森まで足を延ばした。この夏は四国の剣山に出かける予定だ。山に行き、頭をからっぽにして景色を楽しむことが、菅氏にとって、仕事に挑むための貴重な気分転換になっている。 京都府生まれの奈良県育ち。大学は兵庫県で過ごし、結婚後は大阪府内に住んでいる。そのため関西、大阪への思い入れは強い。「関西人はイノベーティブであってほしい。関東の人がやらないことを関西人ならやるぞ、みたいなね」。東京にも12年間単身赴任した。 「たとえば海外の観光客が電車の券売機の前で困っているとするでしょう。東京では声をかけない人が大半ですが、大阪では『どないしたん?どこ行くのん?』と誰かが声をかける。しかも日本語で(笑)。これが関西人。フレンドリーで恥ずかしがらずにチャレンジする」。菅氏はさらに続ける。「残念ですが、そういうところにもっとも縁遠い業種が銀行です。銀行は硬いイメージがありますから。でも、銀行も関西ならではのあり方がある。りそなではできなくても、関西みらいならできる。そんな新しいビジネスモデルにチャレンジしていきたいですね」 関西みらいFGの使命は、関西の地域社会の発展、活性化と関西経済の活性化への貢献。 「お金を預かるだけでなく、統合によって地域の中小企業の皆さんをサポートできる幅が広がった。浸透はまだまだですが、やるべきことを積み重ねることによって、私たちの存在感が増していくと思っています。魔法の杖はない。コツコツとやっていくだけです」と展望を語った。