松井 一郎氏×田中 卓氏×北田 淳一氏 万博を大阪・関西へ。ー巻頭特集対談

松井 一郎 大阪府知事が語る

2025年日本万国博覧会の誘致活動が加速してきた。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに大阪の夢洲(ゆめしま)を開催地として立候補を表明し、さまざまなPR活動を行なっている。今年の秋には日本、ロシア、アゼルバイジャンの中から開催国が決定する。誘致委員会会長代行の松井一郎氏(大阪府知事)、オフィシャルパートナーである東洋テック株式会社の田中卓氏、当社代表の北田が対談を通じてさらに機運を盛り上げた。

大阪・関西こそ開催にふさわしい地 BIEの調査団に強くアピールしたい

─まず万博誘致に向けて現在の取り組み状況を教えてください。

松井 国際博覧会は国家プロジェクトですので、現在、国・自治体・経済界のオールジャパン体制で取り組んでいます。今年(2018年)11月には博覧会国際事務局(以下BIE)の総会で3ヵ国の中から開催国が決定しますが、そこで少なくとも加盟国の過半数の支持を得る必要があります。それに先立ち、この3月にはBIE調査団の来日という正念場を迎えます。調査団には大阪・関西が万博を開催するのにふさわしい地であり、オールジャパンが一致団結して全力で取り組んでいること、立候補国の中でもっとも住民や企業の方々から強い支持があることをアピールしていきたいと考えています。

─そのような中、オフィシャルパートナーとしてどのような思いで誘致活動に参画されていますか?

田中 弊社は昭和41年に大阪で創業し、その4年後に開催された日本万国博覧会では警備に関わる幹事会社の一社として全体の警備とパビリオンの警備を担当させていただきました。その経験から万博は弊社だけでなく大阪の警備会社全体にとって発展の起爆剤になる大きなイベントだと認識しています。  一昨年、おかげさまで弊社は設立50周年を迎えることができました。これまで多くの皆様からご信頼とご縁をいただき、やはり社会貢献活動をしなければならないと考えた時にちょうど2025年の万博誘致というお話がありました。地元の警備会社としてこのような大きなイベントには積極的に参加して、大阪府警備業協会約500社の皆さんに恩恵が回るように、リーダー役として1970年の時よりもさらに深く踏み込んでサポートさせていただきたいと思っています。

北田 弊社は万博誘致でいちばん大事な地域の盛り上がりに貢献できると思いました。われわれはこの『Root for』を始め、地域に密着したフリーペーパーなど複数のメディアを持っています。万博誘致のわくわく感を醸成して、多くの読者とクライアントである中堅・中小企業の皆様にそれらを伝えていきたいですね。街ぐるみで応援するつもりです。

松井 オフィシャルパートナーの皆さんにはこれまでもそれぞれの企業の強みを活かしてロゴマークの掲示や誘致のPRなどにご尽力いただいており感謝しています。おかげさまで関西においては少しずつ盛り上がってきていると思います。さらに誘致を確実なものにするために、3月にBIE調査団が大阪に来られる時には、各企業にお持ちのリソース等を活用いただいて、さらなる機運醸成にご協力いただければと思います。

田中 弊社もわれわれが持っている警備サービスを誘致活動の中で使っていただこうと、昨年東京駅前の郵便局で行なわれたイベントの警備をさせていただきました。3月にBIEの幹部が視察に来られる時も警備をさせていただく予定です。この誘致活動が安全に行なわれ、そのことがBIEからの評価につながるようにやっていきたいと思います。

松井一郎氏、田中卓氏、北田淳一氏 三者対談の様子

重視されるのは機運の醸成 盛り上がりを大阪から全国へ

─誘致の成功には機運の醸成が鍵とも言われています。現在の状況はいかがですか。

松井 誘致には他国を圧倒する機運の醸成が不可欠です。そのためには賛同者の数を数字でアピールすることが何より重要です。現在、万博誘致の応援団として誘致委員会のWEBを通じて登録していただいた方、署名活動で名前をいただいた方、合わせて約50万人が賛同してくださっています(1月25日時点)。昨年9月時点の6万人からこの4ヵ月間で飛躍的に増えました。しかし、50万人になったと言っても日本の人口約1億2千万人から見れば、まだ1パーセントにもなりません。万博は大阪で開催されますが、これは日本の国としての誘致活動ですから、関西での盛り上がりを全国に波及させていくことがいちばんの課題だと思っています。

田中 たしかに大阪と東京では認知度に差があるなと感じます。私はスーツにロゴマークを記したピンバッジを付けていますが、東京に行くと「そのバッジは何?」とよく聞かれます。大阪ではいろいろな人がバッジを付けていますが、大阪以外の都道府県でも同じように広がっていくのが望ましいですね。  また、賛同者数については弊社も力を入れてまいりました。東洋テックの本体では約1000人、グループ企業を入れると約2500人の社員がいます。社員本人はもちろんその家族や友人にも会員登録を勧める活動を行ない、1月の時点で一万名を超える数になりました。数字ではかなり貢献できたのかなと思っています。

北田 弊社では2月1日から会員登録数を増やすためのキャンペーンを始めました。万博誘致を応援してプレゼントをもらおうという企画を弊社のホームページ内に立ち上げたのです。プレゼント賞品に応募すると万博誘致の会員登録ページに自動的に移動して、そこから登録できる仕組みです。プレゼント賞品はオフィシャルパートナーの企業を中心に提供していただき、東洋テックさんも協賛してくださっています。このようなキャンペーンを通じて万博誘致のわくわく感を醸成していきたいと思っています。

万博を一過性のイベントではなく、 産業の柱をつくる機会にする

─万博誘致による大阪・関西の経済波及効果についてはどのようにお考えでしょうか。

松井 会場建設による投資や企業の出展などの運営費、それに2025年の春から秋にかけての開催期間には2800万人から3000万人を迎えようとしているわけですから、その方々の消費など直接的な経済効果は感じていただけると思います。1.9兆円という試算額も出ています。ただ、われわれが考えている経済効果というのはそのようなイベントだけのものではないんです。  今回のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。世界中、特に先進国では超高齢化社会のなかでいかに健康寿命を伸ばしていくか、あるいは人生最後まで自立して過ごしていくかが皆の願いです。日本人の平均寿命はそのうち100歳になると言われおり、われわれは万博を通じて100歳まで元気で自立して人生を楽しめる「もの」と「サービス」を生み出したい。これは世界中の人々が求めていることだと思うんですね。その大きな産業の柱を関西で、大阪でつくっていけるんじゃないかと考えています。それができれば増えつつある社会保障費の国民負担も抑えることができます。これもひとつの経済効果ではないでしょうか。万博を開催する直接的な経済効果と、そこで生み出した「もの」と「サービス」が世界のニーズをとらえた商品になる経済効果は計り知れないものになると思いますよ。

田中 弊社も大阪府下で約2万5000人の高齢者向けの見守りサービスをやっています。このサービスはこれからもっと進化していくでしょう。そうすると松井知事がおっしゃるように、高齢者に自助努力をしていただくことによって社会福祉のコストを見直すことができます。  また、万博を通じてサービスを生み出すという視点は警備業界にも通じるものがあります。最近は犯罪が国際化しており、社会全体のセキュリティに対する期待レベルは以前よりずいぶん高くなっています。一方でAIといわれる人工知能を持った監視カメラやロボットの実用化が進んでいます。今後デジタルワークフォースの実用化がどのように進化するかによって警備のあり方も変わっていくでしょう。2025年にはこれまでの万博に比べて警備員の数が半分になるかもしれません。進化した技術をどのように組み合わせて使っていくかはまさに新しいサービスを生み出すことであり、長い目で見た経済波及効果につながるように思います。

北田 松井知事のお話を聞いて、「未来社会のデザイン」という意味がよくわかりました。万博をやること自体が目的ではなく、やることを通じて未来社会をつくっていくことが目的なんですね。  私も関西を基盤に事業を営む者として大阪・関西への経済波及効果には多いに関心があります。われわれの媒体のお客様は大阪の中小企業が圧倒的に多く、その方たちの商売繁盛をお手伝いしているのですが、どこも景気が悪くしんどい思いをされています。今伸びていると言われているインバウンドも大阪市内中心で潤っており、今後はそれを大阪府内、そして関西にどのように波及させていくかが課題だと思います。万博の誘致が決まったらわれわれがそれを仕掛けていって、シャワー効果のように大阪府内の活性化を促していくことがミッションだと感じています。

─最後に『Root for』の読者である大阪府内の約2万人の中小企業の経営者に向けて、
松井知事からメッセージをお願いします。

松井 誘致に残された時間はあと9ヵ月。いよいよラストスパートです。大阪・関西のホスピタリティを広くアピールすることで何としても誘致競争を勝ち抜きたい。まだ応援の会員登録がお済みでない方はぜひ登録をお願いします。また、万博のロゴマークやポスター掲示をあちこちでシティドレッシングの形でお願いしていますので、こちらも広げていただきたいと思っています。ものづくりもサービス業も結局ニーズがあるものをつくり、その商品によって多くの人が集まってきます。その中でどんどん大阪の注目度をあげていき、大阪にお越しになる方々を増やしていきます。そうして消費が拡大していけば大阪のものづくりもサービス業もさらに伸びて行きます。万博を皆さんの期待に応えられるイベントにするためには官も民も一体で取り組むことが重要です。中小企業の皆さんには、皆さんが持つあらゆるチャンネルをフルに活用いただきながら、ぜひ自分たちがつくりあげるんだという気概で万博誘致に参画いただきたいと思っています。