田中 修治氏>スタッフの魅力を引き出す 独自のカルチャーで成長し続ける

NSでのスタッフ個人による情報発信の奨励、管理職の総選挙制度、社内マイルの福利厚生… 独自のアイデアをスピーディに実行することで、社員のモチベーションを引き出し、 メガネ専門店オンデーズの成長とイノベーションをはかる田中社長。 快調に走り続ける原動力といえる、オンデーズのカルチャーに迫る。

オンデーズの買収を決意 巡りあったメガネ業界

国内50店舗で売上げ20億、負債14億、赤字2億。「絶対倒産する」と言われていたメガネチェーン店オンデーズは、10年間で売上げ150億、世界10カ国200店舗以上に展開するまでに成長している。 「機能性やファッション性はもちろん、オンデーズはスタッフ一人ひとりが発信する接客の魅力やサービス、つまりカルチャーで売っている」と話す田中社長。現在、低価格設定の自社開発商品を直営店舗で販売するメガネチェーンのSPA業界では、3本の指にはいる。 倒産寸前のオンデーズの買収を決意したのが30歳目前のとき。20歳から会社経営をてがけて成功と失敗を繰り返し、オンデーズの前は映像やイベント系のデザイン会社を経営していた。 「ベストだと思って企業へ提案した企画やデザイン案が、結局無難なところに落ち着く。それだったらウチでなくていいのでは? と思うことが多くて、フラストレーションがたまっていたんだと思います」。30歳になる前にBtoBから離れ、店舗業ができないかと思っていたときにオンデーズ買収の話が巡ってきた。 最初は誰かに仲介しようと思って再生計画を練っていたが、メガネ業界には圧倒的なナンバーワンがいないこと、店舗やスタッフの状況は悪くないことがわかる。「エンジンや足回りはまだしっかりしているから、運転手を替えれば再生できるんじゃないかと思えてきた。それに社長になれば、自分がデザインしたものを直接お客様に届けることができる」。失敗してもいい、何もしないで後悔したくないという思いが固まった。

個人の発信力を評価する カルチャーと時代が一致

周囲の反対を押し切ってオンデーズの社長になったが、倒産寸前の会社だから資金力も商品力もない。ないない尽くしのなかで会社を立て直すためには、一度メガネを買ってくださったお客様から「きみがいるからまた買いにくるよ」と言ってもらえる接客やサービスをするしかないと考えた。 「オンデーズの田中さんじゃなくて、田中さんのオンデーズになろうという話をスタッフにしました。お客様には気に入ったスタッフ目当てにメガネを買いにきていただき、そのあとでオンデーズだとわかっていただくくらいでいい。自分に会いに来てくださるお客様が増えれば、仕事がもっと楽しくなりますよね」。 競合他社を気にかけて対抗するよりも、自分たちが必要だと思うことを実行していたら、個人の発信力が評価される独自のカルチャーが育ったという。そしてそれが、若者を中心にSNSがもてはやされるいまの時代にうまくマッチした。

ゲームを楽しむように 仕事ができる会社

メガネ業界のなかで、最初に外国人スタッフを雇いはじめたのはオンデーズだった。誰よりも早くインバウンド隆盛を予想していたわけではなく、このまま人口が減れば外国人が身近になる社会になるだろうと見通していたから。社内で実施している「SNSを活用した個人発信の奨励」「インフルエンサーの採用優遇」「出産準備特別休業制度」「全社員勤務時間内禁煙」なども、それらが求められる社会になることがわかっているからスピーディに実行しているだけだという。 なかでも「社内マイル」は空前のヒット企画。出勤状況や売上げの達成度、業務改善提案などでマイルを貯めたスタッフは、獲得マイル数に応じて商品や旅行などの特典と交換できる。「シフトを代わってもらったからお礼に100マイル」とスタッフ間で贈りあうこともでき、なかには社長と高級寿司が食べられる券などもある。 獲得マイル数に応じてステージが上がっていく楽しみもあって、スタッフには大好評。「ゲームを楽しむように仕事ができたらいい」という田中社長の思い通り、社内マイルを利用した新しい福利厚生制度で、社員のモチベーションを高めることに成功している。

社長の人事権をなくし 上司は総選挙で選ぶ

もうひとつ、オンデーズのカルチャーとして忘れてはならなのが、社長の人事権をなくして、管理職(店長・スーパーバイザー・エリアマネージャー)を投票で選ぶ人事制度。学歴、社歴、性別に関わりなく、やる気のあるスタッフが立候補して選ばれるから、オンデーズでは「なぜあの人が上司なの?」という声が出ないという。投票得点の分配は一般スタッフ票50%、管理職票50%に設定され、どちらか一方に人気があるだけでは当選できない公平なシステムになっている。だから、社長が投票しなかった者が当選することもありうる。 年に1度、管理職クラス以上のスタッフが世界中から集まる「OWNDAYS SUMMIT in JAPAN」を開催することも恒例となった。社長からの経営方針発表をはじめ、エリアマネージャーの総選挙や、技術力を競うコンテストの決勝戦、ベストルーキー賞の発表などが華々しく繰り広げられる。 「いろんな趣向が凝らされて年々賑やかなイベントになっていますが、1年の節目であり、自分たちはこうしていきたいんだというオンデーズのカルチャーを具現化できる大切な場になっています」。

メガネショップとして 守りたい当たり前のこと

ユニークかつ先進的なアイデアでスタッフのやる気を引き出す一方で、メガネショップとしては奇をてらうことはしないという田中社長。「僕たちはメガネを売るのではなくて、メガネをかけて見える景色を売っていると考えています」。 そのためには、品質の高い商品をつくってお客様に精一杯のサービスをし、店舗をいつもきれいにするという、当たり前のことを大切にしている。メガネをかけたあとのお客様の暮らしがよりよくなるように、お客様に最適なメガネを提供することが一番と考えるから。 オンデーズでは、「メガネ加工検査技士」という社内資格制度を設けている。より確かな知識や技術を身につけてお客様に対応するため、社内研修や社内資格試験などを実施。資格取得者は、等級ごとに用意されたオリジナルピンバッジをつけることができ、給料もアップする。

優秀な人材を獲得するために 社長の顔を見せることが必要

定期的に更新されるブログや毎日のように投稿されるツイッターなど、田中社長自らSNSを使った発信を続けている。最近では、メルマガ「僕は『絶対倒産する』と言われたOWNDAYSの社長になった」の配信も開始。負債14億からの回復への道のりと、その裏側を公開している。どんなメディアを通しても、100%自分の伝えたいメッセージは伝わらないから、自分で発信するほうが誤解がないとの考えだ。 就職や転職を考えるとき、ほとんどの人がインターネットで情報収集するようになったいま、自社をどうアピールするかがシビアに問われる。「採用応募者のほとんどが僕のブログを読んでくれていますね。いい人材に入社してもらうためには、社長の顔を見せることも大切だと思っています」。 SNSの個人発信をスタッフに強制はしていないが、それでたくさんのお客様が集まり、楽しく仕事して給料が増えているスタッフがいるのも事実。「優秀な人材を競合他社と奪いあう時代がやってくるから、個人の魅力を発信できるインフラを整えることは、会社を成長させるひとつの方法」と考える。 スタッフのモチベーションを高めるユニークな取り組みや、個人の発信力を推奨する独自のカルチャーで、メガネ業界を超えたイノベーションを起こし続けるオンデーズ。世界を見据え、時代を先どりする躍進は、さらに加速するに違いない。